サウナトータルプロデューサー笹野美紀恵さん × オリエンタルバスビューティ取締役CBO笹川友里 対談
日本各地でサウナの新たな体験を提供するサウナプロデューサー、笹野美紀恵さん。彼女が率いる革新的なサウナ施設「しきじ」は、サウナ愛好家たちの間で聖地として崇められています。健康や美容に対する独自の視点から、女性に嬉しいサウナの効能やプラスαで楽しめる今後のサウナについて、オリエンタルバスビューティのブランド責任者を務める笹川友里がお話を伺いました。
笹野 美紀恵 さん
サウナトータルプロデューサー。株式会社ONEBLOW代表取締役。実家はサウナの聖地「しきじ」。地域の特徴を活かし、五感で感じられるサウナをホテル・旅館・診療所などでプロデュース。熱さを超えた養生のためのサウナ体験を提案している。
笹川 友里
2013年にTBSテレビに総合職で入社し制作ADを経験した後、人事異動でアナウンサーに。独立した現在はオリエンタルバスビューティ株式会社Co-Founder&CBO(最高ブランディング責任者)としてSaunaTherapyをディレクションしている。また女性特化型の転職サービスやキャリアイベントなど、女性のキャリア支援事業を展開するNewMe株式会社を共同創業。その他、TOKYOFMにてラジオパーソナリティ、ファッション誌での活動など。
笹川友里がサウナにハマった、「聖地」と言われる「サウナしきじ」の魅力とは?
笹川 笹野さんのご実家の「サウナしきじ」は、「日本のサウナの聖地」と言われていますよね。実は私も、サウナにハマったきっかけは「しきじ」だったんです。それまでは正直「サウナは男性のもの」という概念があったのですが、「しきじ」では体にダイレクトに効能がありそうな薬草を贅沢に使われていて。
笹野 うれしいです。
笹川 施設の規模の大きさや歴史が醸し出す雰囲気とか、いい意味での衝撃がありました。そこから私はサウナにハマり、この「SaunaTherapy」の存在を日本中のサウナ好き女性に届けたいと思って日々運営しています。因みに、これまでご家族で経営されてきたという歴史も含めて、「しきじ」がみなさんに愛される理由を、ぜひ教えていただきたいです。
笹野 まず「しきじ」は利用料が非常にお手頃です。商売として考えると厳しいですが、最終的にはお客様に喜んでもらえると逆に自分が幸せになります。サービスがいいなと思っていただいたり、自分がプロデュースしたものに「行きました!」という連絡が来たりすると、企画している側のほうが「ありがとう!」という気持ちになります。それが商売の極みですよね。だからやめられないのです。
笹川 お客さまの喜ぶ顔が見えますしね。これまで伝統的に「しきじ」というものを守ってずっと経営をされてきたと思うのですが、いろいろなところとコラボレーションをしたり、業界の外で「しきじ」の名前を聞いたり、「しきじ」自体で新たな取り組みをされたりというイメージが強くあります。それはどのようにして行われているのですか?
笹野 私は東京で自分の会社をやっているので、静岡という場所やサウナに関しても、俯瞰的に見られるのです。
笹川 笹野さんご自身は今の拠点は東京なんですね。
笹野 はい、週末は帰ったりしていますが、東京でしかできないこと──代理店業などもできますし、東京にいた方が機動力や瞬発力がある仕事ができるので。インスタグラマーなどの、動きが早い広告系などもあったりするので、東京でガッツリ企画して、静岡に持って帰るということをやってきました。たぶん温浴で、そういうメディアリレーションをやった施設は、あまりなかったと思います。いまはいろいろな代理店が入って企画をやっていますが、それらも飲食業のプロデュースなどと、やっていることは変わらないのです。「オープンしました」「レセプションやります」「来てください」という……。そういう意味では、ちょっと「しきじ」を俯瞰的に見られたことが大きいと思います。
笹川 これまでも本当に地元に愛される存在だったけれど、笹野さんが俯瞰で見たり、外部との様々な繋がり方を考案してきたことで「しきじ」はより多くの方に知られることになったのですね。どれくらい前からメディアでの露出などを意識されてきたんですか?
笹野 10年くらい前からずっとやっています。あとはTwitterなどのSNSで「『サウナしきじ』に行った」という投稿を見つけると、その人に連絡してリツイートしたりとか、ひとつひとつ随時オタクのように追いかける、みたいな(笑)。基本、好きなんですよ、それが。
笹川 笹野さんは、やはり子供の頃からサウナには入っていたんですか?
笹野 もちろん入っています!でも、「しきじ」のあの空間で入っていると、ほかのサウナがちょっと息苦しかったりしました。痛いというか、苦しいというか。でも、汗をかくのはもともと好きなので、汗をかかない時が続くと、嫌になるんです。気持ち悪いというか。
笹川 汗をかく習慣がつくと、汗をかく間隔が空くと気持ち悪いですよね。わかります!
1時間で心も体も整ってデトックスできる。サウナは、忙しい女性との相性抜群!
笹川 笹野さんは、「しきじ」という看板を押し出しつつ、女性のヘルスケアなどの脈絡から、いまもいろいろな発信をされていますよね。私たちも「サウナ×女性」というのはすごく相性がいいという考えで「SaunaTherapy」を運営しているのですが、笹野さんは女性にとってのサウナの効能を、どうお考えですか?
笹野 抜群にいいと思います! 女性は忙しいじゃないですか。こう言うと、おそらく男性の方たちは「俺たちも忙しいよ」と言うと思いますが(笑)、とくにお子さんがいらっしゃる女性は、倍のスピードで動いていると思うんです。朝から、自分が食べるもの以外にお子さんの食事を作って、家族を見送って、かつ仕事をして……その時点で3人、4人、5人分くらいの働きをしていますよね。
笹川 影武者がいるんじゃないか、という感じですよね(笑)。
笹野 それだけの働きをしたうえで仕事もしていたら、「エステに1日行って……」なんていう時間はないじゃないですか。
笹川 私、12月に2人目の子どもを産んで、今はふたり子育てをしているのですが、やっぱりサウナに行く時間を捻出できなくて……。マッサージなどもなかなか行けず。たとえば子どもが2〜3人いらっしゃる方のなかには、「24時間のなかに、自分をリラックスさせる時間が5分もない」という方が、けっこういらっしゃると思います。
笹野 そうですよね。私はそういう意味でも、サウナは忙しい女性のほうが向いているのではないかと思っています。マッサージに行ってあれこれやったりとか、旅行に行くのにも、けっこう時間がかかりますよね。でも、誰かの協力があれば、1時間なら時間を作れるということもあると思うのです。サウナは、その1時間でできる究極のデトックスだと思うのです。
笹川 たしかに、1時間空き時間があったとして何かデトックスしたい時、ヨガとか選択肢はいろいろありますが、「ストレスを流す」という意味では、サウナの1時間が一番良さそうな気がします。
笹野 汗も老廃物も出ますし、呼吸を整えたら心も整って、ストレスも流れていくと思います。サウナでは意外と深呼吸をしない人が多いのですが、大きく息を吸って吐くと本当にヨガと同じで、効果も相当いいんですよ。なので、一石三鳥くらいだなと私は思っていて。
笹川 本当ですね。しかもサウナに入っている時間は「ひとり時間」ですから、一石七鳥くらいになる感じがします!(笑)
笹野 特にママさんは、ひとりになれる時間は、たぶん、ほぼないですよね。
笹川 ないです。「ひとりになりたい」って、けっこう思います(笑)。「SaunaTherapy」のスタッフは子だくさんで、取材中の今この現場にも私以外に4人・3人・3人のママさんがいます。子育てや仕事の両立の大変さを知っている我々だからこそ「忙しい女性の方に思う存分休んで欲しい」と本気で思っていて、利用時間や温度、アメニティ、香り、空間、接客など細部までこだわっています。
笹野 忙しい方は時間に制約がありますもんね。
笹川 そうですね。お客様も、キャリアを持っていたり、お子さんがいらっしゃったりと、本当に忙しい方のリピート率が高いという印象があります。笹野さんの日々の活動を拝見していると、女性の健康やヘルスケアを推進されている方だなと思うので、私たちもサウナを介してそういう活動を広めていきたいです。
北里大学とのコラボレーションで作る「オーダーメイド薬草」という取り組み
笹川 笹野さんは、日本各地で、その地元の特徴を生かしたサウナ施設をプロデュースしたり、コンセプトをブラッシュアップしていく活動もされていますが、個人的な活動もされているのでしょうか?
笹野 はい、やっています。
笹川 実は私、その情報をある方のSNSで発見してしまったのですが、「しきじ」ならぬ「みきじ」という活動をされているとか。
笹野 はい、北里大学東洋医学総合研究所という、漢方医学を研究しているところとコラボして、「オーダーメイド薬草」というのを作りたいなと思っています。
笹川 「しきじ」と言えば薬草ですもんね。そのオーダーメイド薬草は、何に使う薬草なんですか?
笹野 たとえば水風呂がハッカ水というのも、いいと思いませんか?ハッカをたくさん敷き詰めた水風呂、気持ちいいと思うんですよね。自分だったら入ってみたいなと思って。また、たとえば「今日は体調がよくないな」という方には「ピンクのサウナに入ってください」と。そのピンクのサウナは、たとえばローズがたくさん使われているとか……。入ることで気の流れがよくなるとか、そんな施設があったらいいなと思ったのです。
笹川 「SaunaTherapy」でも「シーズンの香り」という形で季節ごとに独自にオイルを調合し、ご来店いただいたら深呼吸しながら香りを嗅いでいただき、ご自身の体にフィットする香りでサウナに入っていただくようにしています。薬草で水風呂をそういうふうに使うことができる。面白いですね。
笹野 そうなんです。でも、薬草はすごくデリケートなものなので、誰もが取り扱えるかというと、そういうわけにもいかないのです。「しきじ」は、独自で調合師の方を押えていますが、その分コストもすごくかかってしまうので、ほかの施設ではなかなか難しく。そこで今、オーダーメイドの薬草を作って、家庭用のお風呂に入れて手軽に楽しめる入浴剤を作っています。でもそれは「しきじ」の仕事ではないので、「笹野美紀恵だし、『みきじ』じゃない?」ということで、「みきじ」という商品名で作っています。
笹川 「みきじ」のネーミングセンス、好きです!ご自身でつけたんですね笑
笹野 はい。
笹川 名前を決めるのって難しいですよね。
笹野 「森林」とか「ハッカ」とか、かっこいい名前にしようかなと思っていたんですよね。
笹川 シュッとした方向ですね。
笹野 そう。それで、「う〜〜〜〜〜ん……北里で薬草か……。薬科……、やっかし……。そんなにシュッとしていないな。うん、『みきじ』だ」と。
笹川 それは「みきじ」ですね(笑)。とても面白い活動だと思います。