サウナの効果を検証:データで見るストレス軽減

サウナには、さまざまな健康効果が期待されています。特に注目されるのは精神的な効果で、ストレスの軽減に役立つとされています。ストレスの軽減は、メンタルヘルスの維持に寄与し、健康状態を向上させます。

ストレスは血糖値と密接な関係があり、血糖値を測ることでストレスレベルを評価することが可能です。今回、血糖値に詳しい東洋大学 学際・融合科学研究科 特任准教授/株式会社SympaFit 代表取締役加治佐平先生の監修のもと、筆者が血糖値測定センサーを装着してサウナ前後の血糖値を計測し、ストレスレベルの変化を検証しました。

本記事では、サウナの健康的・精神的効果、サウナと血糖値の関係からメンタルヘルス向上のアドバイスなど、多角的な視点からサウナの効能を探ります。

この記事の監修者

加治佐 平

監修者


東洋大学 学際・融合科学研究科 特任准教授/株式会社SympaFit 代表取締役。東京大学野球部出身。バイオサイエンスの専門家で、「血糖値でメンタルを読む」アプリ「SympaFit」を開発。プロ野球選手や、オリンピック選手などさまざまなアスリートのメンタルコンディショニングを行い、本番で100%の実力を発揮するアドバイスを行っている。また、安心・安全な妊活のサポートを行っている。

目次

サウナの基本的な効果

サウナには、健康面・美容面・精神面において、さまざまな効果があります。まずは、基本的な効果について見ていきましょう。

サウナの健康効果

血行促進

サウナに入ると体温が上昇し、血管が拡張するため、血流が良くなります。酸素や栄養素が全身に行き渡りやすくなり、細胞の代謝が活発になります。特に、末梢血管の血流が良くなることで、手足の冷えが緩和され、むくみが解消されます。また、内臓の働きが活性化して便秘が解消される効果も期待できます。

疲労回復

サウナの高温による発汗は、体内の老廃物や疲労物質を効果的に排出します。これにより、肩こりや腰痛が緩和され、身体全体の疲労感が軽減されます。また、サウナに入ると自律神経が整い、リラックス効果が得られるため、精神的な疲れも和らぎます。

美肌効果

サウナで汗をかくことで、老廃物が排出され、新陳代謝が向上します。これにより、肌が滑らかになり、美肌効果が期待できます。毛穴に詰まった皮脂や汚れが落ちやすく、ニキビシミ予防も期待できます。

免疫力向上

サウナに入るとヒートショックプロテイン(HSP)が増加し、免疫力が強化されます。HSPは細胞の修復や抗炎症作用を持ち、風邪やウィルス、心筋梗塞、認知症などの病気の予防に役立つと言われています。

ダイエット効果

サウナに入ることで代謝が活発になり、カロリー消費が促進されます。汗をかくことで体内の余分な水分や毒素が排出され、むくみ解消にも繋がります。継続的に利用することで、脂肪が燃えやすい体質になり、ダイエット効果が期待できます。

サウナの精神的効果

リラクゼーション効果

サウナはリラクゼーションに非常に効果的です。サウナの高温環境に身を置くことで、体温が上昇し、血管が拡張して血流が良くなります。これにより、筋肉の緊張がほぐれ、体全体がリラックス状態になります。また、温冷の交代浴は、交感神経と副交感神経を活発にさせ、自律神経のバランスを整えます。

ストレス解消

サウナにはストレス軽減効果もあります。高温のサウナと冷たい水風呂を交互に入ることで、体内でエンドルフィンなどの幸福感をもたらすホルモンが分泌され、ストレスが軽減されます。継続的にサウナを利用することで、血糖値を下げ、様々な病気を未然に防ぐ効果が期待できます。こちらについては、本記事の後半で詳しく説明します。

集中力と創造力の向上

サウナは集中力と創造力の向上に効果的です。高温環境で体温が上昇し、脳への血流が増加することで、酸素や栄養素が行き渡りやすくなります。また、サウナ後のリラックス状態では、α波が増加し、脳がリラックスしながらも活性化されるため、新しいアイデアが浮かびやすくなります。これにより、仕事のパフォーマンスが向上し、集中力創造力が高まります。​

サウナの”ととのう”効果:血糖値から紐解く

サウナに入ると、”ととのう”と言われておりますが、どういうことなのでしょうか?
実は、このサウナによる”ととのう”効果、つまり自律神経に与える影響を、血糖値というパラメータで可視化することができます。

サウナと水風呂が血糖値に与える影響

実は、サウナに入っている間は、血糖値は上がります。高温の環境が体内の交感神経を活性化させ、これがアドレナリンなどのストレスホルモンの分泌を促進し、血中のグルコース(ブドウ糖)を増加させ、血糖値が上昇します。この現象を「ストレス反応」と呼びます。

サウナの高温による極限な状況において生存を維持するために、即座にエネルギーを共有するためにアドレナリンが活発になるのです。いわゆる「火事場の馬鹿力(英語でAdrenaline Rush)」も同じ仕組みです。

危機的状況において、普段エネルギーが行き渡らない筋肉細胞の隅々までエネルギーが行き渡るので、思わぬ筋肉の力が出ます。その後、水風呂に入ることで、体温は下がりますが、引き続き極限状態のため交感神経は活性化し、血糖値は上昇し続けます。

サウナ利用後の血糖値変動

サウナと水風呂という極限状態から抜け出すと、身体の体温が安定し、副交感神経が急速に優位になります。この時、ストレスホルモンが抑制され、血糖値が下がります(ディープリラックス状態)。副交感神経が優位になることでリラックス状態が促進され、自律神経のバランスが整います。

サウナのセッションは、人間の生物学的反応を利用したストレス緩和方法なのです。サウナと水風呂で意図的にストレス反応を促すことで交換神経を活性化させ、そのストレス状態から解放された時に、身体が一気に副交感神経を活性化させリラックス状態に導きます。ただし、この変動パターンを正しく理解し活用するためには、いくつかの注意点があります。

安全なサウナ利用のための注意点

サウナを安全に利用し、健康効果を得るためには、次の注意点を理解し実践することが重要です。

十分な水分補給:サウナに入る前、入っている間、そして出た後には十分な水分を摂取しましょう。脱水状態は血流を悪化させ、血糖値のコントロールにも悪影響を及ぼす可能性があります。

適切な時間と頻度:サウナに長時間滞在するのは避け、1回のセッションは15分程度に留め、1週間に数回の頻度で利用するのが理想です。

健康状態に応じた利用:糖尿病患者や低血糖症状を起こしやすい人は、必ず医師と相談の上でサウナを利用してください。自身の健康状態に応じて適切な利用方法を見つけることが重要です。

急激な温度変化を避ける:サウナから出た後は、急激な温度変化を避けるために、ゆっくりとした動作で冷却を行いましょう。これにより、体調不良を防ぎます。

体調の確認:サウナ利用前に自分の体調を確認し、少しでも異変を感じた場合は無理をしないことが大切です。

これらの注意点を守りながらサウナを利用することで、血糖値コントロールやリラックス効果を最大化し、安全かつ健康的なサウナ習慣を取り入れることができます。

サウナの入り方・ととのい方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

実験で明らかになったサウナの効果

実験の概要と目的

加治佐平先生監修による血糖値測定実験は、サウナ利用と血糖値の関係性を科学的に調査するために行いました。この実験では、実際に筆者が2週間に渡り、血糖値を計測する装置(グルコースセンサー)を身に着け、日常生活を送りながらサウナに入った日と入らなかった日の血糖値の変動を観察しました。

検証方法

STEP
血糖値を測るグルコースセンサーを腕に装着する
小さな針が付いたセンサーを上腕の後側に、しっかりと押し込む
STEP
スマホに計測アプリ*をダウンロードした後、センサーに近づけてスキャンする
*SympaFitアプリを使用
STEP
一日数回(最低でも8時間おきに)スキャンしてデータを蓄積していく

検証結果:通常時とサウナ利用時の血糖値比較

サウナに入った日と入らなかった日の血糖値を比較しました。その結果、以下のような興味深い発見がありました。

サウナに入らなかった日(通常時)の血糖値グラフ

  • 睡眠時の血糖値:79-96
  • 起床時の血糖値:85

サウナに入った日の血糖値グラフ

  • 起床時にサウナに入り、サウナ→水風呂→休憩を3セット行った
  • サウナ水風呂に入っている時は血糖値が上昇
  • 休憩時には血糖値が著しく低下。正常範囲を下回り、血糖値が50まで下がることが観察された(赤線部分)

ととのいタイムを設けた場合と設けなかった場合

  • 「ととのいタイム(休憩)」を設けずに3セット入ると、交感神経のみ優位
  • 「ととのいタイム」を設けると、その時間帯にはっきりと副交感神経が優位

サウナに入った2日後の血糖値グラフ

  • サウナに入った2日後の睡眠時血糖値が通常時よりも低くなることが分かった
  • 睡眠時の血糖値:75-84(通常時よりも10低い)
  • 起床時の血糖値:92
サウナに入った後の睡眠時の血糖値グラフ

加治佐平先生の論文によると、サウナに入った後の睡眠時血糖値は下がることが明らかになっています。

引用:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1389945723004641

考察:3日に一度のサウナが睡眠の質を向上させる?

この調査から、サウナに入ることが血糖値に一時的な影響を与えることが分かりました。サウナに入っている間や水風呂に入ると血糖値が上昇し、休憩中には血糖値が大きく低下する傾向が見られました。

また、サウナに入った後、睡眠時の血糖値が通常より低くなることが確認されました。特に、サウナ利用後の2日〜3日後にその効果がピークに達することが分かりました。これは、サウナが自律神経のバランスを整え、深いリラックス状態を促進するためと考えられます。

これらの結果から、3日に一度サウナに入ることで、深い眠りを継続的に得られると考察されます。サウナは、睡眠時の血糖値を下げ、睡眠の質を向上させるため、眠りが浅い人や疲れが溜まっている人には週に2回のサウナ利用で、継続した安眠を手に入れることができるでしょう。

監修者 加治佐准教授の見解

今回の検証を監修してくれた加治佐准教授に、お話を伺いしました。

血糖値とストレスの関係

血糖値とメンタルは密接な関係にあります。慢性的にストレスを抱えていると血糖値が高くなり、逆にストレスがなくなると血糖値は下がります。

高血糖はホルモンバランスの崩れ免疫低下心血管リスク消化器問題精神的健康問題を引き起こしやすくなります。また、高血糖はストレスホルモンの分泌を増加させ、気分の落ち込みうつ病不安障害のリスクを高めます。

適切な食事のタイミングや内容を意識したり、運動を取り入れることで血糖値を安定させ、ストレスを軽減することが可能です。血糖値が安定すると気分の変動が少なくなり、精神的な安定が保たれます。適切な血糖値管理はメンタルヘルスの向上に重要であり、全体的な精神的健康を維持するために必要不可欠なのです。

サウナストレッチもメンタルヘルスの向上に寄与することが分かっています。

サウナのセッションが血糖値を低下させることが発表された加治佐先生の論文
“Correlation analysis of heart rate variations and glucose fluctuations during sleep” Kajisa et al. Sleep Medicine 113, 180-187 (2024)

引用:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1389945723004641

検証に使用したアプリSympaFitとは?

SympaFitは、元々は、スポーツ選手のパフォーマンス向上と体調管理のために開発されたアプリで、血糖値をリアルタイムで測って可視化できるので、試合の前日の過ごし方や、試合直前の血糖値の上げ方などに役立っています。

スポーツ選手の場合は、食後でなくても、血糖値を200から300に上げることができます。これは、アドレナリンが影響しています。緊張や興奮をするとストレスホルモンであるアドレナリンが分泌され、特に、急速にエネルギーを必要とする状況で重要な役割を果たします。

アドレナリンは、肝臓に貯蔵された糖(グリコーゲン)をグルコースに分解して血中に放出します。これにより、血糖値が上昇し、脳や筋肉などエネルギーを必要とする組織にすばやく供給されます。普段エネルギーが行き渡らない筋肉細胞の隅々までエネルギーが 行き渡るので、大事な試合に向けて、血糖値をコントロールすることで、最大限のパフォーマンスを得ることができます。

加治佐 准教授

試合前日に緊張が昂り血糖値が上昇している場合は、サウナに入りストレスを取り除くことで血糖値を下げたり、試合直前の食事を見直すことで、試合中のアドレナリンをマックスに持ってくるなど、様々なアドバイスをしています。

“Adrenaline rush in athletes: Visualizing glucose fluctuations during high-intensity races” Kajisa & Sakai, medRxiv – Sports Medicine Pub Date: 2023-05-16 , DOI:10.1101/2023.05.12.23289815

引用:https://www.x-mol.net/paper/article/1659995248918876160

今後の展望は?予防医療としてのコーチング

今後の展望についても伺いました。

加治佐 准教授

今後は、予防医療として、コーチング個別アドバイスの重要性が高まってくると思います。

個人のライフスタイル、健康状態、目標に応じた具体的な指導やサポートを提供することで、病気の予防や健康増進に寄与する、そんなサービスを展開できればと考えています。


ニューヨークにある「The Well」という複合施設では、東洋の治癒と西洋医学を融合させ、ホリスティックな治療、マインドフルな運動クラス、そして栄養価の高い食事を提供しています。

フェイシャルやボディトリートメント、ヨガ、フィットネスジム、瞑想、サウナなど、あらゆるアプローチが用意されており、ヘルスコーチングというサービスも受けることができます。

奥本

まさに、私たちSaunaTherapyが目指している「ポジティブになりたい時に、思わず訪れたくなる場所」ですね。不調を感じたら、まず最初に駆け込むウェルネス施設が日本にもあったらいいなと感じています。

サウナはメンタルの維持と予防医療に有効的

サウナは、メンタルヘルスの維持と予防医療において重要な役割を果たします。特に、ストレスの軽減血糖値の低下は、メンタルヘルスの改善に大いに寄与します。

サウナに入ると交感神経が活性化し、アドレナリンの分泌で血糖値が上昇します。水風呂に入ると体温は下がりますが、交感神経の活性化は続き、血糖値は上がり続けます。水風呂から出ると、副交感神経が優位になり、ストレスホルモンが抑制されて血糖値が下がります。これによりリラックス状態が促進され、自律神経のバランスが整います。

これらの習慣を取り入れることで、血糖値のコントロールが可能となり、うつ病や不安障害の予防につながり、メンタルヘルスを向上させます。また、サウナの利用は単なるリラクゼーションの手段にとどまらず、予防医療の観点からも非常に効果的です。定期的なサウナ利用は、心身のバランスを整え、慢性疾患のリスクを低減するための有効な方法です。

十分な水分補給長時間の滞在を避けるなど、安全面に注意しながらサウナ習慣を取り入れることで、日々の生活の質を高め、より活力に満ちたポジティブな毎日を送りましょう。


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